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ヘックスバーを使用したパワー向上のためのトレーニング

2020/07/08

バーベルやダンベル、ヘックスバーのような重量物を使用するウェイトトレーニングは、筋力の向上や筋の肥大を目的に行われます。

ウェイトトレーニング自体は、健康増進を目的とする人、ボディメイクを目的とする人、スポーツパフォーマンス向上を目指すアスリートといった様々な人によって行われるトレーニング方法です。

 

ただし、アスリートがウェイトトレーニングを実施する際には、筋力向上や筋の肥大だけでなく「パワーを向上させることができるか」がより重要です。



1. 筋力とパワーの違い

一般的には「筋力(力)」と「パワー」は同じ意味で使用されがちです。

 

「あいつは筋力がすごい」
「あいつはパワーがすごい」

 

日常生活では同様の意味合いで取られるこの2つのワードは、アスリートのトレーニングを考える際には区別する必要があります。

 

「筋力」は、筋が発揮する力の大きさをさします。スポーツ現場では、スクワットやベンチプレスの挙上重量がそのまま筋力の数値として使用されることが多いです。

 

対して「パワー」は、力(筋力)と速度の積で表されます。

筋力の大きさは「バックスクワットで140kg挙上できる」「ベンチプレスで100kg挙上できる」といった発揮された力の大きさを示します。しかしパワーは、「バックスクワットで140kgをどれだけの速度で挙上できるか」といった速度や時間の概念が加わります。

 

そのため発揮した力が仮に100だとしても、その時の速度が30なのか50なのかで発揮されるパワーは異なり、速度50で発揮された場合の方が大きなパワーが発揮されることになります。高いパワーを発揮するには、大きな力を素早く発揮することが必要です。

 

多くのアスリートに要求される走る・跳ぶ・曲がるなどの運動は、この大きな力を短時間で発揮する能力(パワー)が求められます。

このことから単に筋力(力)の最大値を高めることを目的としたウェイトトレーニングだけでなく、パワーを向上させることを目的としたトレーニングも行うことが必要となります。

 

2. パワー向上のために必要なこと

パワーは力×速度です。
そのためパワー向上のためのトレーニングでは、単に大きな力を発揮するだけでなく、高い速度で発揮することが必要となります。

 

単純に考えると、パワー=力×速度であるならば、力と速度をともに最大化させることで、最も高いパワーを発揮できそうです。

 

しかし力と速度には「低い速度では大きな力が出せるが、高い速度では発揮できる力が小さくなる」というトレードオフの関係性があります。

そのためパワーを最大化するためには単に大きな負荷をかける、速度をあげるだけでなく、最大パワーが発揮できる負荷設定でトレーニングを行うことが必要です。

 

最大パワーが発揮できる負荷はエクサササイズによってことなります。

例えばジャンプスクワットではスクワットの最大挙上重量の30%前後の重量で行った時に発揮されるパワーが最大となるとされています。対してクリーンでは、最大挙上重量の80〜90%で行なった際に最大パワーが発揮されるとされています。

 

エクササイズによって最大パワーを発揮できる負荷設定が異なるため、目的に応じてエクササイズの選択をすることに加え、適切な負荷設定をすることが重要です。



3. ヘックスバーを使用したパワートレーニングとそのメリット

ヘックスバーの一番の特徴は、バーの軌道を自分の体の中心に通すことができることです。

このため通常のバー(シャフト)を使用したバックスクワットやデッドリフトと比較し、腰への負担を軽減させることができます。

またより自分の重心近くでバーを制御できることから、無理なく全身を使って強度の高い全身運動が可能です。

 



このヘックスバーを使用したパワートレーニングとして、ヘックスバージャンプ(ジャンプスクワット)があります。

 

 

ヘックスバーを使用したジャンプスクワットでは1RMの10〜20%の負荷で最も大きなパワーを発揮できていたという報告(1)や、体重の40%の重量で行なった際に最も大きなパワーを発揮できたという報告があります(2)。

負荷設定はトレーニング対象者によるところもありますが、比較的低い重量でも効果的に実施できることは特徴の一つと言えます。

 

またヘックスバーはトレーニング環境やトレーニング歴にも左右されにくいというメリットがあります。

バックスクワットの姿勢でジャンプスクワットを行う場合には、安全に実施するためにスクワットラックやセーフティーバーを準備する必要がありますが、ヘックスバーであればそれらは不要であるため、屋外スポーツ現場でも導入しやすいです。

またパワー向上を目的とした代表的なエクササイズであるクリーンやスナッチなどクイックリフトは、安全かつ効果的に実施するためにはある程度のトレーニング経験が必要となりますが、ヘックスバーを使用したヘックスバージャンプでは、比較的経験の少ない人でも実施可能です。



これらのことから、ヘックスバーを使用したパワートレーニングは、安全性や簡便性がありつつパワー向上に効果的なトレーニング方法として実施できるというメリットがあると言えます。

 

日本のスポーツ現場では、専用のトレーニングジムがなかったり、スクワットラックなどの専門的な機材がない現場も多いです。

そういった場合にもヘックスバーがあれば、筋力向上からパワーの向上まで、場所の制限を減らしながら安全に実施していくことができます。

 

パワートレーニングが不足していると感じるアスリートや団体、チームはヘックスバーでのパワートレーニングを導入してみてはいかがでしょうか。



参考

  1. Turner, T. S., Tobin, D. P., & Delahunt, E. (2015). Optimal loading range for the development of peak power output in the hexagonal barbell jump squat. Journal of Strength and Conditioning Research, 29(6), 1627-1632.

 

  1. Timothy, J. S., Shana, M. M., Olusegun, S., Logan, C., John, J. M., Irineu L., & Paul C. (2019). The Effect of Load Placement on the Power Production Characteristics of Three Lower Extremity Jumping Exercises. Journal of Human Kinetics, 68(1), 109–122.